大阪高等裁判所 昭和49年(ラ)312号 決定 1974年11月15日
抗告人 増田慎一(仮名)
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
抗告の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである。
当裁判所も抗告人の本件子の氏変更の申立を却下すべきものと判断するが、その理由は原審判理由第二項記載の判断説示と同一であるから、これを引用する。
よつて、原審判は相当であつて、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 仲西二郎 裁判官 三井喜彦 福永政彦)
主文
本件申立を却下する。
理由
一、申立人は「申立人の氏増田を亡父の氏長谷川に変更することを許可する。」との審判を求め、その理由として、「申立人は亡長谷川裕(明治三三年一月二〇日生、昭和三九年三月一二日死亡。)と増田春子との非嫡出子で、昭和三三年七月二日に亡長谷川裕に対する認知の裁判が確定したものであるところ、亡父の氏長谷川の氏を称し度いので本申立に及ぶ。」と述べた。
二、当裁判所で審理の結果申立人の上記申立理由として主張する事実が認められる。
しかしながら、民法第七九一条の子の氏の変更の規定は、現実に生活を共にする親子の間においては、たがいに同一の氏を称し、又は称せしめ度いという国民感情として設けられた規定であり、その立法趣旨からすると、既に父母が死亡してしまつた後にまで、このような氏の変更を認める必要性はないので子の氏の変更は父母が生存中であることを要すると解すべきである。
よつて、申立人の父が死亡した後である本件申立はその理由がないから、これを却下すべく、主文のとおり審判する。
(家事審判官 鈴木清子)